半分はまだ冬で何となくモノトーンな中を走り出す。
風の通り道。ランニングウェア一枚では冷たい季節風を遮れなくてウインドブレーカーを着込んできたのに、自分の住む街も出ないうちにもう汗ばんできて、早々にリュックに仕舞ってしまう。
薄着になって寒気が肌を刺してきたそのときに、太陽が現れて暖かな陽の光で一気に私を包んでくれたときの嬉しさ。もう冬の日差しではなくなった。
春の到来は足が速い。兆しを感じたら、もう目を凝らし耳を澄ませて季節の歩みを感じ取らなければならない。
空の青さ、風の香り、土の匂い、鳥たちの声。そして、早春の草花たち。
頭上に四十雀のさえずりが聞こえだした頃、足元をよく見るとスプリングエフェメラルたちが姿を現す。春の妖精と呼ばれるこの季節の草花は、その名の通り気が付かないうちにそこにいたかと思うと、いつしかふっとかき消えてしまう。儚いながらも、しかし、まだ去りきらない冬の厳しさを破って一番先に春を宣する先駆けたちでもある。
節分草はほぼ正確に節分に顔を出す 土の中からわずか数センチの妖精だ |
キクザキイチゲは節分草のあとに現れる |
この時期のミスミソウはまだ寒そうにしていた |
そして、妖精たちが夢のように消えていくと、陽光が日に日に力強くなっておなじみの春の風景が目に付き始める。
雑木林に福寿草が華やかさを加える |
固かった山茱萸(サンシュユ)のつぼみもほころび始めた |
春蘭も開花の準備に忙しい |
日溜りに紅梅が赤く灯り、すぐさま追いかけるように白梅も咲き始め、蠟梅と交代してかすかな甘い香りを送ってくれる。梅の小枝で動き回っているのは目白たちだ。
毛糸の帽子やウインドブレーカーの登場する機会は徐々に減っていき、走って身体が温まると薄い綿の手袋も外したくなってくる。心と身体が解き放たれる。背筋を伸ばして、ストライドも少しばかり伸ばしてみよう。
春だ。
北島政明
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