春 歩くために走るのもまた佳し




走るために走るだけでなく、たまには季節の風の中、歩くために走っていくという一捻りもまた一興です。

歩くと、走るよりも当然に遅くなって、周りに向ける気持ちの余裕が増してくるのを感じます。
やわらかいパステル画のような新緑や足元の小さな野花を嬉しく見てとり、樹々のそよぎを心地よく聴き、薫風を肌と鼻腔の両方で味わいます。





日ごろはカメラを手に自然公園へ走ることの多い私ですが、この季節は普段は行かない場所にも歩きに走っていきたくなります。
歩きたい場所まで5キロ、10キロと、走ってでかけるワクワク感も魅力なのです。
もっと遠ければ途中まで電車などを使えば行動範囲がぐっと広がります。
そこから走ってゆく道すがら、春の風に舞う桜吹雪に包まれ、川辺のやわらかい草木の色彩が目に優しい。
お弁当を入れたリュックを背に、散策する楽しみを思い浮かべながら走れば、走るきつさも軽くなろうというものです。





走っている間にウォーキングのグループと出会うこともあります。こんにちはと声を掛け合うのも楽しい。
山道ですれ違うランナーが私と同じようにリュックでも背負っていたら、やぁあなたもですねとの思いを込めて親指を立てて目線を交わすだけで気持ちが通じ合います。

週末などに少し余裕のある時間を見つけて、歩くために走りに出かけてみませんか。
走ってきた足を止めて歩きだしたら、自分の周りに春がひろがっていきます。

北島政明





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