コロナ禍を経て再訪 春の多摩湖・狭山湖 周回ランニング by 北島政明

コースマップ


コロナ禍の数年間アプローチを控えてきたこのコースは、実は私にとって思い出深い場所です。
もう10年ほども前になりますが、コース近郊に住まわれている年長のラン友の方と、多摩湖を起点にJR三鷹駅近くまでまっすぐに伸びた多摩湖自転車道を往復した後に続けてきょうのコースをご一緒したことがありました。全部で50kmほどの長丁場でしたが、お互いの話をしながらの楽しいひとときだったことを鮮明に覚えています。その方は、当時、月に複数回のウルトラを走るほどの鉄人ぶりでした。その後も、私の妻も伴ってランニングを楽しんだこともありお付き合いが続いています。

所沢近くに位置する多摩湖・狭山湖のエリアは、西武ライオンズの球場ドームや西武遊園地などに人が集まる場所でもありますが、貯水池ダム湖の周りには水源地保護もあって豊かな自然林が広がり、トトロの森ナショナルトラスト運動による自然保護運動が盛んな地域でもあります。

午後は下り坂の天気予報だった今回は、雨になる前に走り終えようと多摩湖近くの西武多摩湖線武蔵大和駅まで電車を利用してのスタートとしました。まず、駅すぐからの狭山公園を通って多摩湖のダムサイトへ向かいます。平日だったこともあり朝の散歩をする人はちらほら程度。林の中を歩いてきた女性の方は、広い草地広場に入って腰を下ろすと朝ごはんを始めました。桜咲く広々とした朝の自然公園での朝食、ちょっとうらやましい光景でした。

狭山公園の広場 こんなところでのんびり朝ごはんを食べてみたい


ダムサイトを見上げる場所に桜林が広がっています。ちょうど満開を迎えた淡いピンク色が薄曇りの空と相まってパステル画を見ているようです。この春に入学するのでしょう、真新しいランドセルを背負った女の子を連れて記念撮影をする家族連れの姿がありました。ダムサイトへの階段を一気に駆け上がっていくに連れて、桜林を俯瞰する光景へと変わります。ダムに上がり切ると湖の向こうに西武球場の白いドームと奥多摩の稜線が朝らしくくっきりと見えていました。

狭山公園から多摩湖のダムサイトを見上げる

多摩湖ダムサイトからの湖面
中央右寄りに見える白い屋根は西武ライオンズの球場ドーム
左手の尖った山は、おそらく奥多摩の大岳山

ダムサイト近くからは富士山が見えていた
このあと1時間もしないうちに富士山の姿は霞んでしまった


多摩湖周回路は舗装された自転車・歩行者用のアップダウンです。車道とは完全に隔てられています。以前来たときには気づかなかった距離表示がなされたりしていましたからランナーに人気があるのでしょう。桜を眺めながら足を運び、ドーム球場の横を過ぎてしばらく進むと多摩湖を南北半分に仕切るルートが分かれていきます。ちょっとしたインターチェンジのような曲線を描いて私は「全周コース」へと進みます。

やがて、玉湖神社(たまのうみじんじゃ)。ここには多摩湖狭山湖の水神が祀られています。晩秋の紅葉は一見の価値がある場所です。ちょっと立ち寄ってご挨拶。誰一人いなくて静寂の中にありました。ここからわずかに戻ったところに、狭山湖へのルートが分岐します。

玉湖神社の狛犬


狭山湖周回路に入ると、一転して舗装されていない土道です。前夜の水たまりを避けてジャンプ!。湖は水源地のためフェンスで囲まれていて、ランニングルートからは残念ながら湖面は見えずフェンスの向こうに樹林が広がるばかりです。多摩湖ほどランニングコースとして整備されてはいませんが、やがて、北側の山林の中へ入る分かれ道の表示がところどころに出てきます。この奥には湿地帯があって、散歩道として整備が進んできているようでした。以前に足を踏み入れたときには半ば薮のような状態でしたが、トトロの森取得地も散在しており、気持ちよく訪れることのできる場所に変化しつつあるのかもしれません。

狭山湖ダムサイトからの狭山湖

一面のタチツボスミレ

ムラサキケマンとその白花

オオアラセイトウ または ハナダイコン

狭山湖周回路から北側(湖と反対方向)への分岐表示
自然観察路や湿地が案内されている

アップダウンが何度も繰り返し出てくるのでそのしつこさが足に堪えます。狭山湖の西方に大きく回り込んで走っていくと、ようやく「出会いの辻」に出ました。ここは、六道山公園への複数の歩道が一か所に合する場所。昔の一里塚のような雰囲気で私の密かなお気に入りです。ここから六道山公園へはまっすく数百mほど。

出合いの辻


六道山公園は、「野山北・六道山公園あそびの森」として南斜面が開拓された子どもたちが駆け回って遊べる自然公園ですが、私が走るコースはその山側外縁で、公園内には入っていったことがありません。六道山公園に入るとすぐにレンガ造りの展望塔があって、その屋上から眼下の桜を俯瞰するとなかなかに美しい。晴れていれば富士山や新宿副都心を遠望できるはずですが、朝見えていた富士山は姿を隠してしまい、春霞状態でした。ここで一休憩、眼前の桜を愛でながらパンをかじり、お茶を飲みます。早くもピンク色のレンゲツツジが咲いていました。

六道山公園展望台とその屋上からの眺め


六道山公園を出ると周回路は南下して、六道山公園の外縁に沿った緩やかな下りになります。路々すみれがたくさん咲いていました。タチツボスミレにコスミレ。赤っぽいすみれを視界の端に捉えたので立ち止まるとエイザンスミレの群落でした。葉の切れ込みが特徴的で、他のすみれよりも赤味がかった大振りな花、私が好きなすみれです。大きな群落だったのでうれしくなって元気を取り戻します。それからまもなく、公園斜面の下方にインフォメーションセンターの建屋が見え、そのすぐ先には六地蔵の石碑がありました。

エイザンスミレ

六地蔵の石塔


六地蔵の石塔は、四角柱の3面に地蔵尊が2体ずつ掘られ、もう1面には由来らしき文字が彫ってあります。文字は判読できませんでしたが、この石塔は明治期に建てられた赤痢禍の供養塔です。この辺りで多くの犠牲者がでたのでしょうか。斜面は急に下って、やがて給食センター脇で車道に出ます。すぐ近くには、かたくりの湯という温泉と食事の施設があり、ラン友と走ったときにここで食事を取った思い出があります。村山市が業者に委託して経営していますが契約終了によってこの4月から当面閉鎖されるのは残念です。午近くでしたので思い出に食事をしようと思いましたが、雨予報が頭をよぎり先に進むことにします。

キブシの花穂がぶらさがる

アケビ 上が雌花、下が雄花


しばらく車道に沿って走ると、道の反対側に向こうからやってくる多摩湖の周回路とである場所に至ります。私は車道を渡ってヘアピンのようにカーブしてその周回路に合流します。多摩湖からはまだ距離のある西の外れで、ここから多摩湖南岸へと向かう路は細かなカーブが多くアップダウンが大きくて足に負担がかかります。道が細いので背後からくる自転車にも気を使います。そうしたアップダウンを繰り返しながら進んでいって、ようやく出会う鹿島休憩所。水栓で顔を洗い、一息ついたら周回路を走るのはここでおしまいにして、モノレールの上北台駅方面に下っていきました。

お腹が空きました。駅近くでお弁当を求めて腹ごしらえ。汗で濡れたシャツが冷えてきたのでウインドブレーカーを羽織ってモノレールに乗り込むことにします。立川のすぐ南にある柴崎体育館前駅で下車すると、そこは私が好きな立川公園(根川緑道)。細い流れに沿って桜が見事です。今度は走らずに小川に沿って散策し桜を鑑賞してきました。桜を観終えて駅に帰り着くころになって雨粒が落ち始め、モノレールで多摩センターへ向かっているときには本降りになった雨粒がガラス窓を叩いていました。ぎりぎりのタイミングで雨を免れたこの日のランニングだったのです。

以下、立川公園の桜





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野山北・六道山公園マップ(狭山丘陵の都立公園紹介ページより)
このマップの上部の外縁に沿って走りました。



狭山丘陵絵図(狭山丘陵の都立公園紹介ページより)



トトロの森の所在地(トトロのふるさと基金HPより)
番号が付いた丸印がそれぞれトトロの森の取得地を示している。
狭山湖周辺に多いことがわかる。




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