「コロナよ収まれ」シリーズ12作品に込められた私の思い by 野口智子さん


2020年1月末、日本はまだ大丈夫だった。
横浜新羽の大きなロウバイをスケッチ、多くの人で賑わっていた。
2月末、「コロナなのに桜祭りはいいのか?」
そんなニュースの流れる中、河津に行きスケッチしてきた。

今、2021年10月
この一年半、コロナを描いて描いて・・・
「笑顔」2枚
「収束」7枚
「叫び」3枚


新型コロナ
いったい何?
「新型」とつくから前にも「コロナ」という感染症があったのだろうがよく分からない。
マスクし手洗いして距離をとっていれば大丈夫・・
そういいながら志村けんさんが急死された。
死に目に会えずお別れもできず自宅に戻ってきた遺骨を抱くお兄様の姿が何度もニュースで流れてくる。
「ちっとも大丈夫ではない!」
志村けんさんが亡くなった日、けんさんのイラストを描きながら強くそう感じた。
(インタグラム#skechrunn 2020年3月31日掲載)

どうしたらいいのか?
「姿の見えない・終わりの見えないコロナ」との「戦い」のような生活が始まった。


私は描きたいものを描く(当然と言えば当然なのだが・・)

絵のスタートはスケッチラン。
ランニングで出かけた先々で写真で撮ってくるもよく覚えていないことがあり、
「だったらスケッチしてみよう!」と思いつき絵を始めた。
スケッチしたことがないのにスケッチしようとしたのだから当然描けなくて・・・


記憶に残したいもの・描きたいものがあって、残す手段の一つが絵
「描きたいものを描く」のが絵

「自分の描きたいものを描く。それが一番。表現・制作活動の基本」。
そうおっしゃってくれる笠井一男先生主宰の横浜画塾に入ったのも大きい。
画塾でも描きたいものを描く。
テーブルいっぱいにセットされたモチーフ、季節の花や小物・・・。
私は画塾の扉を開けてモチーフを見た瞬間、センサーが鳴ればモチーフを描く。
鳴らなければ、鳴るものを見つける。
教室内を見渡し、奥からゴソゴソと掃除機を二台取り出し、前後に組み合わせ、「一人モチーフ」を設定して描いた日がある。またモチーフの並んだ収納棚のごちゃごちゃ感がよくてそれを描いた日もある。
セットされたモチーフを描かなくても笠井先生は何も言わなかった。「描きたいものを描くのが一番」そういう笠井先生の影響は大きい。
 また、技法のみを教え込むのではなく、「どうしてそうするのか?」根本的な考え方や捉え方を繰り返し繰り返し指導してくださり、生徒それぞれは「自分の絵」を追求できる。
最後の講評会で一同に並べると同じモチーフを描いてもみんな違う。捉え方も描き方も・・・。
「笠井先生風の絵」でなく「○○さんの絵」と分かる。
これはすごいこと・すばらしいことだと思っている。
「○○教室」の絵は全体的に「○○先生風の絵」になることが多いからだ。


「自分の描きたいものを描きたいように描く」のが絵

テレビをつければ、毎日毎日コロナに関する情報が取り上げられ、感染者数・死亡者数が流れる。
オリンピックも延期されイベントも中止され・・・
「○○はだめ」ばかり。
「いつまでだめ」なのか分かればまだいいが、終わりも見えない。
世の中全体がどんよりとした暗い雰囲気。

そんな中に生きていて、あえてコロナに関係ない絵を描くこともあったのだが、それで終わらせることはできなかった。
コロナがずっとある。
コロナの中にいる。

「コロナの今を描きたい」
マスクをしてうつむいてじっとして不安そうな人々・・・
そういう「現実」ではない。
どんよりとしたこの雰囲気を変えて、希望につながるような明るくなるような絵にしたい。

何をどうしたらいいのかよく分からないが、はやくコロナはなくなってほしい!
終わってほしい!
見えないんだからどこかに飛んで行ってほしい!
吹き飛ばす
吹き飛ばすエネルギーのあるものは?
子どものたちの笑顔
「笑顔でコロナを吹き飛ばせ」(2枚)

コロナが始まってすぐ この状況を何とかしたい そう思って描いた(2020 春)
















第8回富弘美術館詩画公募展出品 入選作品 (2020 秋)
入選作品は美術館内に12月1日から2月28日まで展示予定だったが、コロナにより2か月以上休館だった。















なかなか終わりがこない。
いったいいつになったら終わるのか?
終わりはない?
終息でなくて収束?
せめて絵の中だけでいい。
コロナを終わらせよう!
コロナを収束させよう!
コロナはもういい!
笑顔あふれるみんなにしよう!
「コロナ収束おめでとう」(7作)

「ランニングの世界」26号表紙 (2021 正月)



















公募展 「東光展 小作品部門」出品 入選 (2021 春)
入選作品は東京都美術館に展示予定だったがコロナにより休館。



















公募展 「水彩連盟」 出品作品   (2021 春)



日本水彩東京支部展出品   (2021 春)















サムホール展出品   (2021 夏)














水彩連盟出品予定だったが、「勢いがない」と感じ直前にもう1枚描き直しやめにした作品。描き直したものが上に挙げた水彩連盟出品作品。



















第9回富弘美術館詩画公募展出品作品  (2021 秋)
応募要領に、「サイズ F4・ つづりでも可」
F4の絵をつづりにして「コロナ収束おめでとう」をつくってみよう!
つづり方を考え場面数を決める。
場面ごとに物語が展開するように物語をつくる。
物語に合うように詩画作制。絵はF4 を9枚分描いた。

ぱたぱたと開いていくので「ぱたぱた絵」。
動画にしましたので、どうぞご覧ください。


再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら


みんなの願いはコロナの収束

あちこちの作品展・公募展に出すためにどんどん描いた。
元の写真があるわけではない。
多くの人を組み合わせ一つの空間にいるように描く。
かなりのエネルギーと根気が必要。
ウルトラマラソンで気力・体力の限界を何度も味わった。
絵を描くにも限界ってあるのかも・・とはじめて感じた。

しかも、昼間は友だち実家宅の大掃除のお手伝いをし、帰ってきてからの制作。
毎日グルグル動いて何が何だかわからない状態だった。

ここで「ラン二ングの世界25号」の表紙画を描いたとき(2019正月)の経験が活きた。
「多くの人を組み合わせ 物語を作り 一つの画面に入れる」
その時に初めて描いたので、それはそれは大変だった。

コロナシリーズを人いっぱいにしようと考えたのもその経験があったからだ。
初めてではこのシリーズを描かなかったと思う。


私は、絵を描いていると、その絵の世界にす~っと入った気分になる。
「コロナ収束おめでとう」を描いているとアフターコロナの世界にいられ幸せだった。
みんなが「よかったですね」と声かけ合い、再会を喜び・・・。
マスクもしていない!
テレビから流れ出る暗いニュースを聞きながら、自分だけはアフターコロナの明るい世界にいる。
不思議な感覚だった。

そのうちに終わるから大丈夫!
そのうちにこういう世界が来るから大丈夫。
自分に言い聞かせていたのかもしれない。

姿が見えないもの・終わりの見えないものとの戦いは、自分が思っている以上に、無意識の世界では深く突き刺さり、いろいろ感じているんだろう。
「無意識の世界からの叫び」
それが「コロナ収束おめでとう」を7作も描き続けさせたと思う。

頭で考えたらありえないことなのかもしれない。
一枚終わるとエネルギーを使い果たし、気持ち悪くなるくらい疲れ切っている。
なのにまた次の下描きを始め・・・
何かに突き動かされていた感じだった。


「コロナ収束」を何枚も描いていたら、現実の世界も「収束」するかもしれない・・・
そんな希望をかすかに持っていた。
だが、なかなか減らない!
収束はまだまだ無理っぽい・・・
「いったいいつになったら終わるのか?!!」
もう叫ぶしかない!
「コロナよ!早くおさまれ~」(3枚)

第72回 文京区 秋の文化祭 絵画展 出品予定 2021/10/23~31














令和3年度 板橋区文化祭 区民美術展(公募) 出品予定 2021/10/27~31



















第12回横浜画塾展(2021年9月)に出品予定だったがコロナにより展覧会中止。
どこかに展示したい
「Patina Festival」2021/10/1~23に出品














今は2021年10月下旬。
コロナシリーズはもう終わりでいいと感じている。
次に進もう!
さて何を描こうか?
1月の展覧会に向けて「ネガティブペイント(*)で・・・何か」
やっぱりネガが好きだ!
奥の奥の世界が作れるネガは描いていて楽しい!


これからも描きたいものを描きたいように描いていきたい!
大好きな絵が描けるって幸せだ!

2021年10月22日 野口 智子
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*<編注>ネガティブペイントは、絵画技法の一つ。

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<お知らせ>
〇富弘美術館詩画公募展
動画でお伝えした「ぱたぱた絵」を第九回富弘美術館詩画公募展に出したところ、「優秀賞」を受賞しました。
去年出した「笑顔でコロナを吹き飛ばせ」は「入選」でした。
収束おめでとうシリーズの最後の作品が「受賞」できて嬉しく思います。
美術館に12月から2月まで展示されます。詳しくはHPをご覧ください。

〇板橋区民美術展
先ほどの「コロナよ はやく おさまれ~」を板橋区民美術展(公募)に出品したところ「優秀着想賞」受賞しました。
展覧会後は半年間グリンホール(板橋区民文化会館・大山駅徒歩5分)に展示されます。お時間ありましたらどうぞお出かけください。


〇スケッチラン原画展
2019年春から連載させていただいている楽走プラス内「スケッチラン」
その原画展を開催します。
全部で261枚ありました!
コロナ収束シリーズも「ぱたぱた絵」(富弘美術館詩画公募展受賞)・「コロナよ はやく 収まれ~」(板橋区民展出品受賞)以外は展示します。

11月25日(木)~30日(火)
11:30~18:00(最終日~15:00)
Cafe’& Gallery Patina
板橋区成増3-20-6
東上線「成増駅」から徒歩5分
副都心線「地下鉄成増駅」から徒歩7分

美味しいランチや温かいドリンクもあります。
「さんぽメロディー」表紙の絵にように光が丘公園の銀杏がキラキラ輝いている頃です。
どうぞお出かけください。


〇川崎市バス貸切広告
川崎市バス貸切広告に申し込みました。
個展会場 Cafe’& Patinaのチラシ・個展案内・絵のコピーを展示します。
いつ?どこで?・・・
詳しくはインスタグラム「#SKETCHRUNN(スケッチラン)」に分かり次第 掲載します。
どうぞご覧ください。

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